Birthday Story 宝生 侑巳

(……この構図、このキャラだとあまりしっくり来ないな)
俺は、ペイントソフトで書いたばかりの下書きを見つめながら、考え込む。このままでも悪くは無いとは思うが、何か足りないような気がしてくるのだ。
(もう少し大胆に見えるように俯瞰にしてみるか……?  ただ、そうすると表情が見えにくくなるな……)
あれこれと一人で考えてるうちに、どんどん袋小路へ入っていくような気がする。時刻はいつの間にか、日付が変わる間際だった。息抜きにコーヒーでも淹れてくるかと立ち上がり、ドアに近づくと僅かに人の声がした。リビングにまだ誰かいるのだろうかと、思った瞬間、時計の針が0時を差した。

「侑巳! 誕生日おめでと!!」
「お誕生日おめでとう!!」
「侑にぃおめでとう!」
「ハッピーバースデーいっくん!!」

勝手に開いたドアから騒々しく四人分の声がなだれ込んできた。
「うわっ……!?」
何がなんだか分からないまま、続いて鳴り響いたクラッカーの音に不覚にも情けない声を上げてしまう。
「ははっ、侑巳! 本気でビックリしてるじゃん!」
「うるさい、お前ら何しに来たんだ!」
「何って、誕生日のお祝いだよ。侑巳はいつも自分の誕生日を忘れるからって、嘉月が言ってたから」
「ちなみに、サプライズを提案したのはこのオレさ!! いっくんの特別な日が特別の思い出になるようにね!」
「誰もそんなこと頼んでない!! 今はお前たちに構ってられるほど暇じゃないんだよ、さっさと出てけ!!」
俺は、四人を無理やり部屋の外に追い出すと、ドアを閉める。ふと、壁にかけられたカレンダーを見ればたしかに今日は俺の誕生日だった。
(こんなに、盛大に誕生日を祝ってもらったこと、あんまり無かったな……)
そう思いなおしていると、ドアの向こうからアイツらの声が聞こえた。やらかした。やっぱりサプライズは無理があったかも。いい案だと思ったのに。とひそひそ話し合う四人の声を聴きながら、俺は大きくため息をつく。
意を決して、扉を開けると四人はドアの前に座って何かを相談していた。
「……侑巳、その、ごめ……」
「……祝ってくれたことは、感謝する。ありがとう」
あいつが謝る前に、俺がそう告げれば四人の顔がぱっと明るくなる。
「今書いてる絵が一段落したら、リビングに降りるから。それまでは静かにしてろ」
「そっか、分かった。……でも、侑にぃ、今日はみんなでたーくさんお祝いするつもりだから、覚悟しててね」
「ほどほどにしてくれ……」
嘉月から笑顔で告げられた言葉に、俺はもう一度ため息をつく。だが、それも言うほど悪くないと、俺は心のどこかで感じていた。

テキスト:旭キリン

MaStar☆Up!!