Birthday Story 羽子田 燈火

「そういや、もうすぐオレの誕生日なんだよな」
「はいはい」
「今月、オレの誕生日でさ」
「うん。分かってるよ」
「オレの誕生……」
「うるさい」

4月に入ってからオレは自分の誕生日をそれとなく、それとなーく、みんなにアピールしておいた。だから、今日はきっと祝ってもらえるはずだと期待して、バイトから帰ってくればシェアハウスの様子はいつもの通りだった。
いつも通りの住人たちと、いつも通りの夕飯。オレが呆然と立ってると、ほら早く座ってとあいつに促される。
渋々オレがいつもの席に座れば、どうしようもなく寂しい気持ちになってくる。せめて、おめでとうくらいは言って欲しかったなとオレが思っていると、突然食卓の中心に大きなケーキが置かれた。白いクリームの上に置かれたチョコプレートには間違いなくオレの名前が書かれている。
「……えっ、マジ!? マジ!? マジで!?」
驚きのあまり、声が上擦ったオレのことをシェアハウスの面々が笑う。
「燈火君、今日だけは全然誕生日のことを言い出さないからケーキを出すタイミングに困ってたんだよー」
「ったく、あんだけうるさく言うなら、当日もちゃんと祝ってくれって言えばいいだろ」
「う、うるせー!」
侑巳にそう言い返しつつも、オレの目はケーキに釘付けだった。
夕飯が終わってから、あいつがバースデーケーキを切り分けてくれる。何の変哲もないホールケーキなのに、今日はなんだかキラキラしたものに見えた。
「ケーキ食べたら、プレゼント大会するからな~」
「みんなそれぞれ燈火が喜びそうなの選んだんだよ。喜んでくれるといいな」
いつの間に用意したのか、全員が何かしらの包みを持っていることに気がつき、また俺は声を上げてしまう。
「は!? プレゼントまであんの!?」
「当たり前でしょ、今日は燈火の誕生日なんだから」
少し呆れたように返ってきた言葉に、オレは目を丸くする。祝って欲しかったから誕生日を前から仄めかしていたけど、こうやって実際に祝ってもらえると想像以上に感じるものがあった。
「おやおやー? とうちゃん泣いてる?」
「泣いてねーよ!!」
顔を覗き込んできた朱鳥を振り切って、オレはケーキを頬張る。
誕生日ケーキはすごく甘かったが、ほんの少しだけしょっぱい味がした。

MaStar☆Up!!