Prologue Story 01 Castling

Side
ユヅキ

「我がオリゾンテファミリーの発展に尽くしなさい」
「我々はボスになるのは君だと信じていたのだよ」
「新たな門出に盃を!」
「無事に継承できたが、問題はこれからだろう?」
俺を中心に、左右の椅子にどっしりと腰掛けた男たち。そして男たちから発される声。
心の中ではどう思っているのか分からない彼らの言葉に、俺は軽く笑みを浮かべる。
彼らは先代のボスに仕えていた古参の幹部たちだ。最近は前線に出てドンパチするよりも、この街の権力を持つ人間たちと共に“仲良く”していることの方が多い。
そんな彼らは、強硬派として名が通っていた先代に仕えていたのだ。今は年老いたといえど、彼らもまたそれに類するものだとして扱うのが良いに違いない。
古参の幹部だった彼らは、俺にとってはなくてはならない大事な駒であると同時に、酷く邪魔な存在だった。なによりもまず旧時代の制度や力に固執しているからだ。
「ええ。有事の際には皆さまのご指導を賜りたいと思います」
思ってもいないことを口にしているという意味では、俺もまたこの老人たちと変わらないのだった。