いきなり夜の海に呼び出されて、一体なんなんだろう。空にはいくつもの星が瞬いていて、それが一層寒さを感じさせた。
「寒いんですけどー。いきなり何なの?」
「そんなに文句ばっかりならこれ、あげないよ?」
あいつはがさりと袋を持ち上げた。この時期に呼び出されて、渡されるものなんて言ったら一つしかない。
「別にいーよ。今頃たくさん事務所に来てるだろうし?」
「~~! じゃあいいよ!」
そんなことを口にすれば、あいつは頬を膨らませていた。ほら、ブスがもっとブスになる。頬にたまった空気を、つねって抜く。それでも口をとがらせているから、おでこにキスをひとつ落とした。
「たくさんもらえるけど、あんたのそのぶっさいくなチョコが欲しいって思っちゃうんだよね。だから、貰ってあげる」
売り言葉に買い言葉。あいつはオレの言葉に、呆れながらも笑っていた。
「しょうがないからあげる」
「ありがと」
空に手をかざす。そのまま何かを掴んで、それが逃げないように握り込む。
あいつは何しているのか分からないみたいで、興味津々な表情でオレの行動を見ていた。
握った手をあいつの目の前で開くと、そこには透明なセロファンに包まれたコンペイトウがひとつ。
「手品みたい……!」
「甘いチョコレートのお礼ってことで、願いを叶えてくれる星を捕まえてみた。願い事をして食べたら、叶うよ」
あいつがどんな願い事をするんだろうと見ていると。
「理音君が、いつも笑顔でいられますように」
そんな言葉と共にコンペイトウを口に入れる。まさか、そんなことを願うなんて。予想していなかった言葉に、思わず大きなため息が漏れた。
「そういうとこ、多分……」
好き、という言葉の代わりに、オレはあいつのおでこにデコピンした。