去年までより綺麗なラッピングに、凝ったリボン。そのプレゼントを差し出すこの人の顔が赤くて、改めて「今までのバレンタインとは違うんだな」と実感した。
それは、俺の気持ちも同じ。
逸る気持ちを抑えながら、指が震えないよう軽く呼吸してからチョコを受け取る。だけど、火照る頬だけは隠せない。
「ありがと」
なんとか伝えると、この人は一層赤くなった顔を隠そうとわずかに俯いた。その口元に浮かぶ笑みが可愛くて、胸をぐっと締め付けられる。ここでタイミングを逃すと俺、渡せないかもしれない……。持っていた紙袋をぐっと握り直して、突き出した。
「これ……」
「え……私に?」
頷くと、この人の周りにぶわっと花が咲いたような……気がした。わかんないけど、そんな雰囲気が出ている。それとも、喜んでほしいという自分の気持ちが、色眼鏡で見てしまっているのだろうか……?
「ありがとう、星真君! 開けてもいい?」
子どもみたいに興奮した目で尋ねられ、大きく頷く。すると、すぐに紙袋を開いてソレを取り出した。
「これ、マフィンだよね。チョコ味?」
「ん」
「どうしたの?」
「今日、家庭科でマフィン作ることになって……先生が、想いを形にして渡して伝えるといいって」
そこで言葉を切って、大事そうにマフィンを手にしたこの手を両手でそっと包み込んだ。
「今までは、あんたにもらうのは弟みたいな……友達として、だった。でも……今年は違う。あんたの想いを、恋人として受け取る。そんな大事なもの、俺だけがもらうなんて嫌だったから」
そこで一度言葉を切って、大きく息を吸い込んでから……この人の目を、覗き込んだ。俺を見上げるこの大きな瞳に、俺は今、どんな風に映ってるんだろう。心配とドキドキが混ざり合う中、口を開いた。
「だからこれは、俺からあんたへのバレンタインチョコ」
「星真君……!」
透き通った目にじんわりと涙が溜まる。少しでも動かしたら零れそうなのに、彼女は厭わず瞳を細めた。そこに広がるのは、俺の大好きなあったかい笑顔。
「ありがとう、星真君! でも一人で食べるのは多いから……ねえ、一緒に食べよう」
「ん。俺も……あんたからもらったチョコ、一緒に食べたい」
頷いて、伸ばしてきた手を、そっと握る。その小さな……でも確かな温もりに、口元が緩むのを感じた。