星波島観光協会

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ガチャ

かぷせるのなかで

目を開けると、そこは不思議な空間だった。

視界に入ってきたのは、球体に閉じ込められた写真部のメンバー。球体の半分は透明で、残りの半分は赤やピンク、黄色に紫、緑といったカラフルな色をしている。
これって――。
「ガチャガチャのカプセル……?」
周りを見渡してあいつを探して見るけれど、その姿を見つけることはできなかった。
こんなわけの分からない状況だし、それはそれでラッキーか。
「――で、だ」
問題なのは、他の奴らだった。
不思議なことに、閉じ込められているからと誰も焦っている様子がない。
と、いうよりもむしろ。
「なんか、みんなめちゃくちゃリラックスしてねーか……?」
夕月は飼い猫であるカンナとぼんやりしていて、星真はウーパールーパーの親方を愛でているように見える。理音はケーキを食べているし、昴に至ってはゲームをしている。
……昴は、自分がこうして閉じ込められていることに気づいているかも怪しい。
「っていうかちっちゃくなってる?」
自分だけじゃなく、他の奴らも全員頭の大きさと身体の大きさが同じくらいになっていた。
どうりで頭がやけに重いと思ったわけだ。いつもより小さくなった右手を閉じたり開いたりして、身体に違和感がないか確認する。
こいつはどうしたもんか……。
「おーい、昴!」
「……」
呼びかけても、昴の視線はゲームの画面だけを見つめていた。それはいつもの昴で、ある意味少しだけ安心する。
なんて、思った時だった。
視界がぐらついて姿勢が崩れる。大きな音をたてて、機械からカプセルが出ていっている様子がチラリと見えた。
「……まじかよ」
ハンドルを回されてはカプセルの位置が動いて、ひとつまた一つと減っていく。
(俺の番まであとちょっとじゃん!)
なんでカプセルに閉じ込められているのかとか、この機械から出たらどうなるのか、とか。分からないことばかりで頭はぐちゃぐちゃだ。それでも、どんどんカプセルは減っていって、自分の番が近づいてくる。
「~~出せー!!」
球体の透明な部分を叩いてみるけど、意外と頑丈でビクともしない。
そしてとうとう視界がぐるりと回って、妙な浮遊感が襲われる。
(ヤバイ、次は俺かよ!)
そんな焦りを無視して、カプセルはガコンと音をたてて落ちていく。その衝撃に耐えきれなくて、カプセルの中で身体が回転する。
ぐるぐると視界が回って、思わずぎゅっと目を瞑る。
(もう大丈夫か……?)
揺れが収まったのを感じて、そーっと目を開ける。
「……!」
目を開けた先には、こちらをじっと見つめる巨人……いや、赤ん坊?
小さくなってしまった身体には、赤ん坊も巨人に見えてしまい思わず息をのむ。赤ん坊は、じっとこちらを見つめていたかと思うと、俺を閉じ込めているカプセルに手を伸ばした。
「ウソだろ!?」
どんなに逃げようとしてもカプセルからは出られず、赤ん坊の手の中に収まってしまった。
「く、喰われる……!」
バクバクと心臓が早鐘を打つ。目の前に広がるのは、その赤ん坊の口の中で。
もう駄目だと思った瞬間――。


「……――はっ!」
身体がビクンと強張ってから、目が覚めたのは写真部の部室だった。机につっぷして、眠ってしまっていたみたいだ。よだれが垂れていないかと口元を拭っていると、ホワイトボードに書かれた『星祭り』の文字が目にはいる。
(――そうだった)
願いが叶う流星が降る夜に星波島で行われる星祭り。
それが臨時で開催されると聞いて、写真部として星祭りに出店するものを作ろうと、みんなで決めていたのを思い出す。
再びホワイトボードに視線を移すと、「島がちゃ」という文字が書かれていた。その横に「決定!」と赤マーカーで書かれている。
(あー、ここまで決まったんだな)
くああ、と欠伸をしてから辺りを見回すと、不思議なことにみんなも同じように眠っていたらしい。眠そうな表情で、同じようにきょろきょろと部室を見回している。
……夕月はいつも通りと言えばいつも通りだけど。
「なあ、俺今夢見てたんだけど、それが変な夢でさ」
「何それ。なーんかオレも変な感じの夢見てたかも」
「俺も」
見ていた夢について、理音と星真も首を傾げていた。
「それってカプセルみたいな球体に閉じ込められてて――」
なんて、言いかけた時だった。
ぱたぱたと、外の廊下を走っている音が聞こえてきた。その音は写真部の前で止まって、やがてがらりと部室の扉が開いた。
「お、遅くなっちゃってゴメンね……! 話、どこまで進んだ?」
申し訳なさそうに謝るあいつは、職員室に呼ばれてたんだっけ。
「島がちゃを作るってとこまでかな」
夕月があいつの質問に答える。『島がちゃ』という単語に、さっきのことを思い出した。
こんな面白い話のネタ、あいつにも話さなきゃ損だ。
「なあなあ、そんなことよりちょっと面白い話があるんだよ。さっき、みんなで夢見ててさ――」
そんな風に前置きをして話始めれば、あいつは面白そうな話に食いついてきて。目がキラキラと光っているもんだから、俺はさっきの夢を上機嫌に話しはじめた。

――それから本題に戻ったのは30分後で、下校の時間になってしまったのは想像通りだった。

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