星屑ヘリオグラフ

恒上波智

Profile
学年:高校3年生 / 誕生日:7月28日 / 星座:獅子座 / 誕生花:ナデシコ / 血液型:O型 / 趣味:身体を動かすこと / 特技:サッカー
あなたの幼なじみの一人。高校3年生。
小さい頃からあなたと昴と育ってきたため、ふたりの兄貴分だと思っている。
自由奔放で自分勝手と思われがちだが、誰に対しても平等に接するので友達は多い。
スポーツ万能で、高校ではサッカー部に所属しながら写真部にも兼部している。

4コマ

消せない気持ち
ゴールに向かって蹴ったボールが相手のゴールのネットを揺らす。
直後、試合終了のホイッスルが鳴り響いた。
わぁっと上がる声援に、駆け寄ってくるチームメイト。ドンッっと肩を組まれた瞬間――“勝ったんだ”と頭が理解し始める。
駆け寄ってきたチームメイトは興奮ぎみに「よく勝てたよな……!」なんて言葉をこぼした。
「俺がいるんだから当たり前だろ」
そう返せば、呆れたような笑いを浮かべられ、「お疲れ」と背中を叩かれた。

「波智ー!」
一際大きい音で、俺を呼ぶ声が届く。声のする方を振り向くと、そこにはふたりの幼なじみの姿。
「波智、お疲れ」
労いの言葉をかけてきたのは昴。「おう」と返事をすると、もうひとりの幼なじみが興奮気味に話しかけてきた。
「最後の追い込みすごかった! 流石サッカー部のエースだね!」
興奮を抑えきれない――そんな表情で話すあいつを、昴が落ち着かせる。いつもの光景に小さく笑ってしまう。
「話すのもいいけど、渡すものがあるだろ?」
「……! そうだった!」
昴の言葉に、思い出したかのように鞄の中を漁り出す。けれど、目当てのものが見つからないのか、次第にあいつの首が傾いていった。
「タオルと……あれ? 飲み物がない……?」
明るかった表情がどんどん落ち込んでいく。
(こうして応援に来てくれるだけでも十分なんだけどな)
「別にいい」と声をかける前に、昴は背を向けた。
「いいよ、俺が買ってくる」
俺が止める暇もなく、昴は小走りで行ってしまった。そうやって、こっちの気持ちを先回りするところが昴らしい。
「……飲み物、ごめんね。とりあえず……」
「おう、さんきゅ」
差し出されたタオルで汗を拭っていると、後ろから声をかけられる。
「こ、恒上先輩……」
「……?」
視線を向けると見たことがない女子が、顔を赤くしながら立っていた。
「最後のゴール決めた時、すごくかっこよかったです!」
「そっか、ありがとな」
ありきたりな返事をしたのにも関わらず、目の前の女子は嬉しそうに笑う。
「また応援にきます!」
元気よくそう言うと、走り去っていった。
あいつはといえば、そんな俺たちの様子を見て、にやにやとした表情を浮かべていた。
「波智は何気に後輩に人気だよね」
「何気は余計だっつーの」
つい反論すると、こいつは俺をじっと見つめた。
「……」
「……なんだよ」
こいつの瞳の中に、俺が映り込む。何かを考え込むような、真剣な表情をしていた。
(俺、変なこと言ったか?)
そう思ったのは一瞬で、再びこいつは笑いながら言った。
「でも、あの反応はだめだよ。波智は恋する女の子の気持ちが分かってないんだから」
「はあ? なーにが恋する女の子の気持ちだよ。恋に無縁なお前に言われたくないっての」
「波智はそう言うけど、私だって恋する気持ちくらい、分かるよ」
ぷぅっと風船みたいに頬を膨らませてこいつは何気なく言った。

(恋する気持ちくらい、分かる……か)

何気ない表情とは裏腹に、その言葉は俺の心をざわつかせる。そうだった――“恋に無縁な”なんて言ったけれど、こいつは恋を知ってる。
俺が思い出したのはこいつの初恋の相手。それは俺もよく知っているヤツで。
頼りがいがあって、誰にでも優しくて……こいつが好きになるのは当然だと思った。
今でも、好きなのか?
そんなことを考えてると胸の辺りが重くなって、黒く塗り潰されるような感覚に陥る。
思い出したくないものを思い出すような、知りたくないものを知ってしまうような――……。
「……ち! なーち!」
肩を叩かれて、沈んでいた意識が戻ってくる。
「ぼんやりしてどうしたの?」
「いや、なんでもねーよ」
「……? それならいいけど。でもやっぱりサッカーしてる時の波智は本当にかっこよかったな」
無邪気な表情を見ると、胸の内に居座っていた黒くてどろりとした感情が嘘のように消えていく。
この関係を壊したくない。この距離感を壊したくない。
「俺はいつだってかっこいいだろ」
この気持ちに蓋をするように、そう言って笑った。

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